久保田真弓

関西大学 

About

関西大学総合情報学部教授。国際協力機構青年海外協力隊にて数学の教師としてガーナに赴任。1991年インディアナ大学にてPh.D.取得。専門はコミュニケーション学。著書『「あいづち」は人を活かす』(2001)廣済堂、共著書『異文化コミュニケーション論——グローバル・マインドとローカル・アフェクト』(2012)松柏社、Kubota, M. (2019) “What is “Communication”?―Beyond the Shannon & Weaver’s Model―” International Journal for Educational Media and Technology, Vol.13, No.1 pp.54-65.

Sessions

オンライン・プレゼンテーション(研究発表 30分) 多元的視点の導入による児童の意識体験 —第3学年「ふるさとのまち」探究的学習の事例より— more

Sat, Nov 27, 11:10-11:40 Asia/Tokyo

 多文化共生の教育は、これまでに様々な取り組みが報告されているが、佐藤(2007)は、その課題を2点指摘する。「多元的な視点の導入による日本や日本人という枠組みの相対化」「関係性を組みかえる視点」である。さらに佐藤(2019)は、実践上の重要な視点として、「多様な見方や考え方の育成」「人と関わる力の育成」など4点を挙げる。これらから多様な視点を育成する重要性が捉えられる。しかし、小学校での実践はあまり見られない。  そこで本研究では、小学校における「ふるさとのまち」をテーマとした探究的学習において、児童の視点を基点とする探究プロセスに、立場の異なる保護者や外国人留学生の視点を導入したときの児童の意識体験に着目し、多様な他者との交流とその視点に対する児童の見方や考え方の様相を明らかにすることを研究の目的とする。  分析対象事例は、石川県の公立A小学校第3学年(1クラス31名)の総合的な学習の時間である。実践期間は2021年5〜7月。児童は、まず町探検を通して「ふるさとのまち」を調べる活動を行い、次に自分の保護者と地域在住の外国人留学生6名(中国1名、ベトナム1名、インドネシア2名、ポーランド2名)に聞き取り調査を実施した。分析データは、以下3点である。1)児童が授業終末に記述する学習ふりかえり記録、2)外国人留学生への聞き取り調査を録音して作成した発話記録、3)授業のフィールドノーツ。これらのデータは、現象学的アプローチを用いて児童の意識体験を中心に分析し考察する。  研究の結果、児童は、自他の視点を比較して捉えながら、特に共通点や新たな視点に注目していた。「似ている」「インドネシアの人も」「中国の人も」などと国籍を超えて共感したり、外国人留学生の「食べ物への困り感」にはその背景を想像したりするなど、多様な他者に対する児童の見方や考え方の様相が明らかになった。本研究の知見は、小学校における多文化共生教育において、多様な見方や考え方の育成並びに関係性の構築をめざす授業設計への示唆を与えるものと考える。

海道朋美 久保田真弓