浪貝美砂, Misa Namikai

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オンライン・プレゼンテーション(研究発表 30分) トランスナショナル空間の再編成:コロナ禍における外来の舞踊教室の事例から more

Sun, Nov 28, 14:30-15:00 Asia/Tokyo

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、人々の物理的な移動のほとんどを遮断した。移動の制限は、従前の「日常」を改めて振り返ることを促す。他方、移動制限が及ぼす心理的・社会的な影響については時間を経過しての検証が必要となるだろう。東京をはじめ大都市には、世界中のパフォーミングアーツが紹介されるが、人々はそれらを鑑賞するだけではなく、お稽古事として日常に組み込んでいる。舞踊(ダンス)教室には、身体化された動きに加え、言語、音楽、衣装、小道具、舞台装置、調度品などが持ち込まれる。その芸能が培われた土地の価値観やライフスタイルも紹介され、実践地(当該事例の場合は東京)に文脈化されていく。人々は、その空間に参加することで、人、情報、メディア、価値観に出会い、新たな物理的・想像的なトランスナショナルネットワークを形成する(Rogers 2015)。 本研究は、コロナ禍の社会的影響を明らかにする一助となることを視野に入れ、外国発祥の舞踊(ダンス)の教室を対象とした事例研究に取り組む。コロナ禍によって生じた、トランスナショナルな空間形成の変容と、それについての思いを講師の語りと実践から探っていく。事例は、アルゼンチンタンゴと韓国伝統舞踊とする。事例は、ラポールを優先し、芸能としての歴史や日本での地名度を加味して選定した。調査の方法は、コロナ禍以前の教室運営とコロナ禍の状況についてのインタビュー、コロナ禍によって改変した実践の参与観察を行った。コロナ禍の活動は、デジタル領域の拡張も顕著であるため、SNS等の活用状況も分析に含めた。分析の結果、海外との往来が遮断されたことによる困難はもとより、日々の教室運営にも大きな改変が認められた。国内の同業者との情報交換を行いつつも、講師自身の持ち味や強み、信念などを見直し、受講生が置かれている状況に応じたニーズを考慮するなどして、他教室との差別化につながる工夫や創造的な実践も認められた。また、国際移動が制約される中、その教室がその国を擬似的にだが体験できる空間と意識され、演出されている面も見出された。発表では、遠近感の語りも談話分析で詳細に見ていく。

猿橋順子、Junko SARUHASHI 浪貝美砂, Misa Namikai