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オンライン・プレゼンテーション(研究発表 30分)

日本語母語話者とモンゴル語母語話者の「感謝の表し方」についてのPAC分析

Sun, Nov 28, 13:10-13:40 Asia/Tokyo Room B (Sunday)

 「外国人が日本に降り立ったとき真っ先に覚えなければならない基本的語句のひとつ」(三宅1993)として、日本語の感謝表現が最も重視される。しかしながら他方で、ダワジャルガル(2013)では、日本人は農耕民族であり、モンゴル人は遊牧民族であるため、和や協調性を重視する日本語母語話者と、「個の力」を重視するモンゴル語母語話者が互いの国民性を知らず、誤解やすれ違いが起きやすいと指摘されている。ここから、違う民族感を持つモンゴル人と日本人の間では、感謝の表し方にも差異があると容易に推測できる。両話者同士のすれ違いを軽減し、理解を深めるには、これらの差異を明らかにし、異文化理解や異文化コミュニケーション教育に活かすことが重要である。  このような背景から、本研究では、日本語母語話者とモンゴル語母語話者の感謝を表す言語・非言語表現を比較対照し、両話者の暗黙裏の文化スキーマの相違を検討することを目的とした。また、暗黙裏に遂行される「感謝表現行動」を探索する調査方法として、日本の大学で学ぶモンゴル人留学生を調査対象者とし、潜在構造の探索に適した事例研究方法のPAC(Personal Attitude Construction)分析を用い、モンゴル語母語話者の感謝の表し方についての特徴を検討した。日本語母語話者との比較には、同被検者を調査対象者とし、同研究手法を用いてランブクピティヤ(2021)が明らかにした日本語母語話者の感謝の表し方についての特徴を使用した。  調査結果では、日本語母語話者が謝意を示す非言語表現として、角度の程度を変えることによるお辞儀を使用しているのに対して、モンゴル語母語話者は品物を渡したり肩を軽く叩いたり撫でたりするような非言語表現を使用しているという解釈が見られた。また、日本の職場では、立場を重視し定型的な感謝の言語表現を頻繁に繰り返されるのに対して、モンゴルでは年齢を配慮に入れ、言語または非言語表現を選択していることがわかった。さらに、日本語と比べて、モンゴル語では言語も使用するが、非言語で示す感謝表現が重視されていることが示された。これらの調査結果から、特に来日間もない頃のモンゴル人への異文化理解の教育では、両国の感謝表現の差異を扱う必要性が提案された。