Sessions / オンライン・ポスターセッション(非会員であっても、本学会の会員の推薦があった場合には 発表できます)
Xジェンダーの相互行為と「指定された性別」への葛藤―FTXの語りをインサイダーとして見る―(仮) #1843
日本社会において、「らしさ規範」 (山田2016)から逃れることは不可能だろう。そんな中、Xジェンダー と日本では呼ばれる性別二元論に当てはまらない性自認の若者が増えていると経験上感じている。そのため、本研究では、FTX (Female to X)という指定された性(assigned gender)が女性で、性自認が性別二元論に当てはまらない3人(年齢:20代前半)のライフストーリーの聞き取り調査を実施し、インタビュー内容を分析した。その結果、以下の2点が明らかになった。 まず、ゴフマンの「役割距離」と「自己呈示」を通して、かれら が性別二元論から逸脱した結果、新たな自己の「らしさ規範」を作り出すことで、今まで相互行為を行い性別二元論が根強い日本社会を存続してきた事が分析できたこと。2点目は、「指定された性別」が女性への社会的抑圧は、性別二元論の再起経験となると同時にそれに対するかれらの葛藤が明らかになった点である。 本研究では、以上の2点を私自身もnonbinaryであるという事から、インサイダーとして分析する私自身のポジショニングも重要な視覚としたい。 本研究の重要性は、まだ数少ないXジェンダー研究への貢献と共に、従来ジェンダーバイアスにおける議論の際、性別二元論に対して批判的であるにも関わらず、それを前提に論じられている現状に対し、性別二元論に囚われない視点からも考えていくことが可能になる点であろう。(898字) 【参考文献】 藤田慶子(2004)「ゴッフマン理論における役割と自己呈示―学校における相互行為の分析視角としての検討―」『東京大学大学院教育研究所紀要』44,pp.301-309 山田昌弘(2016)『モテる構造―男と女の社会学』筑摩書房
「ふたごに対する先入観がアイデンティティの調整に及ぼす影響」 #1868
本研究は、一卵性双生児に焦点を当て、その成長過程において、ふたごに対する先入観が彼らのアイデンティティ調整にどのような影響を与えたのかを、多面的アイデンティティの調整におけるシェイムの役割(末田, 2012)という観点から探求するものである。 古畑(1954)によると、二卵性双生児に比べて一卵性双生児は性格類似度が極めて高い。しかし、一卵性双生児が同一視されることが多い中で、個を確立させようとしていることも示唆されている。たとえば、志村(1999)は、80年代以降の「双子もの」の児童書には、似ている・同質というふたごに対するステレオタイプだけでなく、その先入観を通してふたごが自我を形成し、個を確立している姿が映し出されていると指摘している。 また、ふたご同士の感情的結びつきは強く、彼らの相互関係はきょうだいや友人との関係とは大きく異なると分かった(三木ら、1964,1969)。このように、ふたご間の関係性を問う文献は存在するものの、周囲が持つ先入観に対する当事者の想いを明らかにする文献は少ない。 末田(2012)によれば、「人には他者に見せようとする社会的に価値のある自己の姿(フェイス)」(p.21)が存在する。また、末田は、複数のアイデンティティの調整において、フェイスの背後にあるシェイムとプライドという感情に着目し、シェイムへの対処がアイデンティティの調整に影響を与えると示唆した。前述で取り上げたとおり、ふたごに対する先入観からくる一卵性双生児の感情をシェイムと捉えるならば、シェイムを払拭しプライドを取り戻したときにふたごはアイデンティティを調整するだろう。また、ふたご同士の強い感情的結びつきもアイデンティティの調整に影響を及ぼしている可能性がある。 本研究では、一卵性双生児計8名(男性3名、女性5名)にそれぞれ約60分間の半構造化面接を実施した。その結果を、KJ法(川喜田,1967)を用いて分析し、一卵性双生児として生まれたことで直面したシェイムにどう対処していくのか、どのようなアイデンティティの調整が起きるのかを明らかにし、発表する。
グローバル化に伴う日本食文化の維持と変容 #1880
本研究では、東京都内の日本食(定食)店経営者たちが、グローバル化によって、日本食文化をどのように変容させ、また維持していくのかを探究する。 江原(2014)によると、食文化とは民族や集団、地域、時代において共有され、習慣化したものが伝承されるものであり、食物摂取の役割だけでなく食に伴う一定の作法も含まれる。中でも日本独自の食文化とは、自然の尊重、栄養バランスの取れた食事構成、多様な発酵食品の使用、そして季節や年中行事との結びつきの4つの性質を持つとされている(平松,2019)。 上記の日本食特有の文化への注目度は、ユネスコ無形文化遺産登録をきっかけに高まったとされる(江原,2015)。また「訪日外国人消費動向調査」(観光庁,2019)によると、「訪日外国人が訪日前に期待していたこと(複数回答)」のなかで、「日本食を食べること」(69.2%)が第一位である。よって日本食が世界から注目され、外国人の訪日の動機や目的となっていたことが分かる。 しかし、コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、訪日外国人旅行者数は前年比−86.6%(国土交通省,2021)となり、インバウンドに軸足をおいた日本食の提供自体が転換期を迎えていることは確かである。よって、日本食を提供している飲食店経営者たちが、グローバル化とその流れに拮抗するCOVID-19の影響を受けて、なお日本食および日本食文化をどのように維持し、変容させているのか明らかにし、今後の日本食の存在意義を探求する。 そこで東京都内の日本食(定食)店経営者合計7名に、それぞれ約60分の半構造化面接をオンライン及び対面にて実施した。その結果をKJ法(川喜田,2017)とKH Coder(樋口,2020)を用いて分析したところ、店舗間での共通点、そして差異が見られた。その結果を踏まえて、日本食および日本食文化の維持および変容について考察する。
オンラインコンテスト出場者の自己表現 #1885
本研究では、オンラインコンテスト(オンライン上の活動を通して、投票数の順位を競う大会)の出場者と、それに関わる他者との交流を異文化コミュニケーションと捉え、オンライン上でのコミュニケーション(以下CMC)が出場者の自己表現に与える影響を探究する。2010年代後半から、有名人と大衆間でのCMCは、それ以前と比べてより親密で相互的かつ活発に行われるようになった(Chung & Cho, 2017)。さらに、2019年以降の新型コロナウイルス蔓延に伴い、非対面のコミュニケーションがニューノーマルとなりつつある。また例年対面で行われていたコンテストがオンライン化する傾向も見られる。コンテスト出場者は本名と顔を公開しているが、出場者以外は匿名性を確保した状態で出場者と交流を行うことができ、匿名性の非対称性が生じている。オンライン上の自己開示に関する心理学研究では、匿名の相手に対して親近感を抱くのは難しいとされている(佐藤・吉田, 2008)。また、他者の匿名性がコミュニケーション行動に及ぼす効果に関する研究では、本名や顔が公開される状況下では攻撃的発言が抑制されることが分かっている(佐藤, 2012)。これまで、匿名性が介在するSNSでの交流が、個々人の自己表現に与え得る影響には、限界があるという前提で調査が行われてきた。しかし、SNSの利用が急速に増加し、多様化していることから、オンライン交流が他者に与える影響度は計り知れない。これらを踏まえ、匿名性が担保されている人とそうでない人のコミュニケーションという対照性を研究することは、CMCが人に与え得る影響の見直しに寄与すると考える。本研究では、オンラインコンテストに出場した20歳から21歳までの男女合計6名(女性5名, 男性1名)にそれぞれ約60分間の半構造化面接を実施した。調査参加者は合目的的サンプリング法によって選び、その後KJ法(川喜田,1967)で分析した。その結果、オンラインコンテスト出場者の自己表現方法への影響や自己表現方法の変化においても、匿名性と親密度という2つの要因が深く関係していることが浮き彫りになった。