Sessions / Location Name: Room B (Sunday)

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日本における高度外国人材の文化変容スタイル:アイデンティティと行動レベルに着目して #1835

Sun, Nov 28, 12:30-13:00 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

 近年、日本で就職している高度な知識・技能を有する外国人材(以下は高度外国人材と略す)は増加傾向にある。しかし、多くの企業は、高度外国人材の活用や定着等の対応に苦慮している。その一方で、高度外国人材も日本で働くなか、文化・言語、職務内容、職場における人間関係、企業環境と制度という側面において困難を感じていることが報告されている(小松・黄・加賀美, 2017)。また、多くの日本企業は、高度外国人材に対して日本人社員と同様な役割期待を持ち、日本人と同様な成果を出すことを求めているため、高度外国人材は「日本人化」という同化圧力を受けており、高度外国人材としての特性を十分発揮できていないことが指摘されている(e.g., 鍋島, 2016; 鈴木, 2015; 叶・根橋, 2018; Ye-Yuzawa, in press)。 このような背景を鑑み、本研究の目的は、バイカルチュラル(日本文化と中国文化)な環境に身を置く高度外国人材の文化変容スタイル(Birman, 1994; Barker, 2017)を明らかにすることである。彼・彼女らは日本に暮らし働く中で、どのように自身の文化を変容させているのだろうか。特に本研究ではアイデンティティ・レベルおよび行動レベルを分けて、そのあり方を明らかにしたい。なぜならば、文化変容スタイルは、これら二つのレベルにおいて、異なる様相が現れることがあるためである(Birman, 1994)。  そこで、上記の目的を達成するために、バイカルチュラルな高度外国人材9名を対象とした半構造化インタビュー調査を行った。調査協力者は男性2名、女性7名であり、国籍別に見ると、中国人8名と日本に帰化した元中国籍者1名である。また、彼・彼女らの日本での平均在住年数は9.67年で平均勤務年数は6.33年である。彼・彼女らの文化変容スタイルを分析した結果、アイデンティティ・レベルにおいては、「中国人」という認識は大きく変化していなかったが、行動レベルにおいては、二つの文化の「分離」と「統合」のスタイルを採用する者が多いことが分かった。また、仕事と生活のそれぞれの領域においても、文化変容スタイルが異なることが明らかになった。

日本語母語話者とモンゴル語母語話者の「感謝の表し方」についてのPAC分析 #1863

Sun, Nov 28, 13:10-13:40 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

 「外国人が日本に降り立ったとき真っ先に覚えなければならない基本的語句のひとつ」(三宅1993)として、日本語の感謝表現が最も重視される。しかしながら他方で、ダワジャルガル(2013)では、日本人は農耕民族であり、モンゴル人は遊牧民族であるため、和や協調性を重視する日本語母語話者と、「個の力」を重視するモンゴル語母語話者が互いの国民性を知らず、誤解やすれ違いが起きやすいと指摘されている。ここから、違う民族感を持つモンゴル人と日本人の間では、感謝の表し方にも差異があると容易に推測できる。両話者同士のすれ違いを軽減し、理解を深めるには、これらの差異を明らかにし、異文化理解や異文化コミュニケーション教育に活かすことが重要である。  このような背景から、本研究では、日本語母語話者とモンゴル語母語話者の感謝を表す言語・非言語表現を比較対照し、両話者の暗黙裏の文化スキーマの相違を検討することを目的とした。また、暗黙裏に遂行される「感謝表現行動」を探索する調査方法として、日本の大学で学ぶモンゴル人留学生を調査対象者とし、潜在構造の探索に適した事例研究方法のPAC(Personal Attitude Construction)分析を用い、モンゴル語母語話者の感謝の表し方についての特徴を検討した。日本語母語話者との比較には、同被検者を調査対象者とし、同研究手法を用いてランブクピティヤ(2021)が明らかにした日本語母語話者の感謝の表し方についての特徴を使用した。  調査結果では、日本語母語話者が謝意を示す非言語表現として、角度の程度を変えることによるお辞儀を使用しているのに対して、モンゴル語母語話者は品物を渡したり肩を軽く叩いたり撫でたりするような非言語表現を使用しているという解釈が見られた。また、日本の職場では、立場を重視し定型的な感謝の言語表現を頻繁に繰り返されるのに対して、モンゴルでは年齢を配慮に入れ、言語または非言語表現を選択していることがわかった。さらに、日本語と比べて、モンゴル語では言語も使用するが、非言語で示す感謝表現が重視されていることが示された。これらの調査結果から、特に来日間もない頃のモンゴル人への異文化理解の教育では、両国の感謝表現の差異を扱う必要性が提案された。

日本の若者が感じる韓国文化の魅力と違和感 ―韓国文化の享受経験者に対する事例研究― #1875

Sun, Nov 28, 13:50-14:20 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

 本研究は、韓国文化を楽しんでいる日本の若い世代を対象にインタビュー調査を行い、韓国文化の魅力と違和感についての具体的な情報を収集することを目的としている。異文化(韓国文化)に感じる魅力と違和感の要素を分析・考察することによって、異文化(日韓)の相互理解に有益な知見を見出すことを目指している。  調査は、2020年10月に宮城県の3大学の在学生および卒業生18名(19-24歳)を対象に実施した。インタビュー(Zoom使用)の質問項目は、①韓国文化の享受経験、②韓国語の学習経験、③直接経験(訪韓経験・韓国人との接触経験)、④文化享受・韓国語学習・直接経験の関係、⑤属性で構成されている。  本発表では、主に韓国人のコミュニケーション・スタイルと生活環境についての調査結果を報告する。韓国文化の魅力については、コミュニケーションにおける距離の近さ、デジタル化、出前文化の3つが多く挙げられた。フレンドリーで人間味があふれること、デジタル化が進み暮らしやすいこと、出前文化が発達し楽であることが報告された。これらの結果より、韓国文化の魅力要素として「人情・温かさ」「実用性・利便性」「スピード感」の3つを見出した。韓国文化の違和感については、接客事情、交通事情、トイレ事情の3つが多く挙げられた。無言で仕事ぶりが雑であること、車優先で運転が荒いこと、紙が流せず汚いことが報告された。これらの結果より、韓国文化の違和感要素として「丁寧さ」「安全性」「清潔感」の3つを導き出した。  魅力の3要素は、日本文化に基づく期待度が低いため、韓国文化を通じて期待を上回る経験をすることによって、満足感が大きく、魅力を感じやすいものと考えられる。一方で、違和感の3要素は、日本文化に基づく期待度が高いため、韓国文化を通じて期待を下回る経験をすることによって、失望感が大きく、違和感を覚えやすいものと考えられる。以上のことより、異文化(韓国文化)に対して感じる魅力と違和感は、自文化(日本文化)に基づく期待とのギャップに起因する可能性、つまり期待以上の経験が魅力、期待未満の経験が違和感につながりやすいことが示唆された。

トランスナショナル空間の再編成:コロナ禍における外来の舞踊教室の事例から #1882

Sun, Nov 28, 14:30-15:00 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、人々の物理的な移動のほとんどを遮断した。移動の制限は、従前の「日常」を改めて振り返ることを促す。他方、移動制限が及ぼす心理的・社会的な影響については時間を経過しての検証が必要となるだろう。東京をはじめ大都市には、世界中のパフォーミングアーツが紹介されるが、人々はそれらを鑑賞するだけではなく、お稽古事として日常に組み込んでいる。舞踊(ダンス)教室には、身体化された動きに加え、言語、音楽、衣装、小道具、舞台装置、調度品などが持ち込まれる。その芸能が培われた土地の価値観やライフスタイルも紹介され、実践地(当該事例の場合は東京)に文脈化されていく。人々は、その空間に参加することで、人、情報、メディア、価値観に出会い、新たな物理的・想像的なトランスナショナルネットワークを形成する(Rogers 2015)。 本研究は、コロナ禍の社会的影響を明らかにする一助となることを視野に入れ、外国発祥の舞踊(ダンス)の教室を対象とした事例研究に取り組む。コロナ禍によって生じた、トランスナショナルな空間形成の変容と、それについての思いを講師の語りと実践から探っていく。事例は、アルゼンチンタンゴと韓国伝統舞踊とする。事例は、ラポールを優先し、芸能としての歴史や日本での地名度を加味して選定した。調査の方法は、コロナ禍以前の教室運営とコロナ禍の状況についてのインタビュー、コロナ禍によって改変した実践の参与観察を行った。コロナ禍の活動は、デジタル領域の拡張も顕著であるため、SNS等の活用状況も分析に含めた。分析の結果、海外との往来が遮断されたことによる困難はもとより、日々の教室運営にも大きな改変が認められた。国内の同業者との情報交換を行いつつも、講師自身の持ち味や強み、信念などを見直し、受講生が置かれている状況に応じたニーズを考慮するなどして、他教室との差別化につながる工夫や創造的な実践も認められた。また、国際移動が制約される中、その教室がその国を擬似的にだが体験できる空間と意識され、演出されている面も見出された。発表では、遠近感の語りも談話分析で詳細に見ていく。

サンフランシスコベイエリアの新一世の変容 -長期滞在者への聞き取り調査の比較からの考察- #1870

Sun, Nov 28, 15:10-15:40 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

1.はじめに サンフランシスコは、アメリカの中で最も古い日系コミュニティが形成された場所であり、日系人だけでなく、多くの長期滞在の日本人も生活している。サンフランシスコ近郊で、新一世の特徴がどのように変化しているのかを明らかにすることを目的に、2007年に実施した60代以上の女性4人の長期滞在者の調査と2016年に実施した長期滞在の30代後半から50代前半の日本人女性4人を対象としたライフヒストリー方法による聞き取り調査の比較を行った。 2.研究方法 海外で長期滞在する日本人の特徴を調査するために、対象者の考え方を引き出せる会話を重視する研究方法であるライフヒストリー法が一番適切と判断した。本研究では、(1) 日本で少なくとも高等学校までの教育を受けている、(2) アメリカに15年以上在住しているという2つの条件を満たす長期滞在の日本人女性に聞き取り調査を実施した。分析・検証は先行研究、筆者の先行研究の聞き取り調査と比較し、新一世の特徴の変容を考察した。 3.考察 2007年と2016年の調査の比較から、4つの共通点が明らかになった。一つ目は、日本にいた頃から自我が確立しており、積極的な性格であったことである。二つ目は、子どもに対する日本語と日本文化教育の課題である。日本人としてのアイデンティティを持ってほしい願いが強いことがわかった。三つ目は、海外生活の基盤として友人関係の構築と自身のネットワーク、コミュニティの形成が重要であることである。四つ目は、英語力の課題である。 変化してきている顕著なことは、日系社会と関わりである。このことは、渡米時の環境や状況の違いも影響している。2007年の対象者が渡米した頃は、対象者の語りからも明らかなように、日系社会とつながりを持つことは、情報収集のためにも重要であった。2016年の対象者の渡米時期は、インターネットの普及により日本とのつながりを持続することができたため、日系社会との関わりは重要ではなかった。国際結婚などによる他民族との関わりの増加も変容している点であった。日系社会が求心力を失いつつあることも影響し、日系社会から地域コミュニティへと生活の基盤の広がりが明らかになった。

日本型異文化感受性発達尺度の開発 #1844

Sun, Nov 28, 15:50-16:20 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Sunday)

 本発表は、ミルトン・ベネットによる異文化感受性発達モデル(DMIS)の発達過程が日本ではどのような認知構造で経験されているかに関する過去の研究(山本, 2014; 2015)に基づき、日本型異文化感受性発達尺度の開発を目的として行われた研究を報告するものである。山本(2014)による質問紙調査では、構造的にはDMISの発達と同様でありながらも、違いを知覚して解釈するときの表現の仕方、および、注意を向けて焦点化するフォーカスの当て方等における異文化感受性の具体化には日本的なパターンのあることが明らかにされている。また、「異文化の違い」として認識する対象が「外国人」、「他の地域・地方の人たち」、「他の専門性・所属の人たち」であるかに関わらず、異文化感受性にはほぼ共通した構造のあることも明らかにされている(山本, 2015)。これらの結果、および、質問紙に採用する新たな項目を検討するための質的調査を経て、本研究では外国人に対する異文化感受性について62項目から成る質問紙を用いたインターネット調査(n=900, 20代~60代)を行った。異文化感受性とは二つ以上のカテゴリーに境界化する空間での相互作用において差異性をどのように知覚し解釈するかに関わっているため、外国人と日本人に境界化する異文化を念頭に置くものではない。しかしながら質問紙調査を行うにあたっては「文化的違い」と一般化した質問で尋ねるよりもコンテクストを明確にすることを優先させることにした。  最尤法による探索的因子分析を行ったところ、F1「移行期」、F2「エスノリラティヴ」、F3「自文化中心」の3因子構造が最も適当であると考えられた。これら3つはそれぞれが一次元尺度を成すと考えることのできる一方で、理論的にも、過去の研究で得た構成概念からも、各尺度には下位概念を想定することができた。二次分析を行った結果、F1に「受容 .84」「最小化 .80」、F2に「適応 .86」「異対面 .78」、F3に「防衛 .81」「否認 .72」の下位概念を確認した(数値は内的整合性を示すα係数)。本研究は科研費JP16K04626の助成を受けている。