Sessions / Location Name: Room B (Saturday)

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コラボレイティヴスタディ(協働学習)を通して民主的な文化への能力を育てる英語授業デザイン ―多角的な視点で絵本の原作と翻訳を比較するー #1852

Sat, Nov 27, 08:30-09:00 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

学生同士の協働学習(コラボレイティヴスタディ)により絵本の原作と翻訳の比較を行う英語の授業を通して、多様な気づきを促し、民主的な文化への能力(Reference Framework of Competences for Democratic Culture: RFCDC)を表出させる授業デザインの構築について、発表する。対象は、関東にある国立大学教育学部初等教育理科専攻1年生31名である。 授業で使用したワークシートとグループディスカッションの録音をもとにデータを収集し、RFCDC に該当するどのような発言や記述があるかを、授業者である筆者と授業に同席した同じサブプログラム在籍の院生3名とで多角的な視点を取り入れて分析した。実践は、2021年6月に対面で2回行った。学生は、 Little blue and little yellow 、Rainbowfish to the Rescueと、それぞれの翻訳「あおくんときいろちゃん」「にじいろのさかな、しましまをたすける」について、自分の訳と翻訳者(藤田圭雄・谷川俊太郎)の訳を比較し、その違いの背景にあるそれぞれの経験や価値観について考え、グループで意見交換をした。筆者は協働学習を通して多様な価値観に触れさせ、自分の意見を再構築する活動を促した。またSwimmyと翻訳「スイミー 」については「表紙を選ぶならどこにするか」「それを選んだ理由とその背景にある自分の経験や価値観」、また原作と各国の翻訳版の表紙を比較し、「なぜ、国によって表紙やタイトルが異なるのか、その文化的背景は何か」についてグループで話し合わせることで、多様性への気づきを促した。 学生は翻訳者と自分の背景や価値観を比較するなかで、文化的多様性への気づきを得た。また学校教育の影響を分析し、教育の果たす責任などについての批判的思考が見られた。グループやクラスでの取り組みを通して、文化の異なりに対する寛大さと尊重、傾聴、共感、協調のスキルが観察された。今後は、RFCDCの分析結果をもとに、さらなるケースステディを検討している。

宮古島市の中学生の言語コミュニケーションとバイリンガリズム:言語のエスノグラフィーから観る日本語と宮古語のトランスランゲージング #1842

Sat, Nov 27, 09:10-09:40 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 南琉球の宮古島では、日本語でもない、沖縄語でもない、「宮古語」が話されてきた歴史がある。現在では、その宮古語は他の琉球諸語である奄美語、国頭語、沖縄語、八重山語、与那国語と同様に、ユネスコの世界危機言語地図(Mosley 2010)の中で消滅危機言語として、その危機が指摘されている。  なぜ消滅に至ったのかという理由は、琉球王国が日本国に併合された歴史、1879年に沖縄県が設置され、日本に編入され(琉球処分)、明治期の標準語化政策のもとでは学校教育で日本語への同化を強いたことを挙げることができる。次に、沖縄県は太平洋戦争後にアメリカ合衆国の占領下に置かれたまま、今度は「日本への復帰」を意識することで、学校において「標準語(日本語)励行運動」が奨励された(石原 2015, Fujita-Round 2021)。  このような20世紀に宮古島で起きた歴史的かつ社会的なマクロのレベルでの日本語と宮古語の言語使用が、21世紀には日本語を優位言語にし、一方で、宮古語を弱い言語、ユネスコにより世界で消滅危機言語といわれる言語にしたといえる。本発表では宮古島市においてミクロなレベルで、21世紀を生きる中学生たちが宮古語をどのように使い、また宮古語に対してどのような意識を持っているかを縦断的に調査してまとめた言語のエスノグラフィーから、2010年代の宮古島市の中学生の言語コミュニケーションと日本語と宮古語への意識、また彼女たちの二言語のトランスランゲージングについて考察する。

<参考文献> Fujita-Round, Sachiyo (2021 in press). ‘Chapter 4 Language Communities of the Southern Ryukyus: Miyako, Yaeyama, and Yonaguni’ in J.C. Maher (ed.) Language Communities in Japan,  Oxford: Oxford University Press. Moseley, Christopher (2010). Atlas of the World’s Languages in Danger, 3rd edition. Paris: UNESCO Publishing. 石原昌英(2015)「第10章 奄美・琉球諸島とハワイ諸島における言語復興について」石原昌英編著『沖縄からの眼差し・沖縄への眼差し』琉球大学・沖縄タイムス社

FREPA/CARAPを援用した自己評価調査からみえてくるもの-教育的示唆と実践- #1883

Sat, Nov 27, 09:50-10:20 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

国や地域という境界を越えて世界的に物資、資本、人材、情報が行き来する「グローバル社会」、異なる国籍や民族の人々が互いの違いを認め合い、対等な関係を築きながら共に暮らす「多文化共生社会」が現代社会のキーワードとなって久しい。グローバル化が進展し異文化接触の機会が増大する中、言語能力に加え、文化的な能力が重視されている。この能力は、Byram (1997)やDeardorff (2006)のモデルをはじめとして、多様な用語、定義、概念を用いて論じられてきた。複言語・複文化主義を理念とする「欧州言語共通参照枠」の増補版(CEFR 2020)では、複文化レパートリー(pluricultural repertoire)の尺度が新設され、能力記述子23項目が追補された。その詳細な分類や記述については、CEFRを補完するものとして「言語と文化の多元的アプローチのための参照枠(FREPA/CARAP)」を参照するようにとの指示がある(CEFR 2020, p. 31, p. 124)。さらに、総項目数が数百にものぼるFREPA/CARAPから、日本の状況に合わせた異文化間能力指標として29項目からなる能力記述文を提示した松本(2012, 2013)の試みは、日本の教育現場における利活用の点から注目に値するものである。本発表では、松本(2012,2013)の知識、態度、思考スキルの3つのカテゴリーからなる29項目のリストを援用したアンケート調査の分析結果を報告する。調査対象は、「豊富な異文化体験や学びを通じ、国際感覚を養う」ことを目標とする学科の入学生(3年度分193名)である。7件法による自己評価の得点平均が低かった項目から得られる示唆を、同学科のカリキュラムや授業内容の見直しに活用することをねらいとする。とくに、29項目中26位の「下位文化の存在と複数の下位文化への所属(知識)」と27位の「自言語・自文化の客観的説明、異文化に対する客観的な意見の表明(スキル)」の2項目に着目し、それらの要素を授業に組み込むための実践例や案を提示するとともに、調査結果から得られる示唆について論じる。

国際交流プログラムにおいて「交流を通じた学び」を確実とする教育手法の検討  ー東南アジア、南アジアにおける大学生国際協働プロジェクトを事例としてー #1828

Sat, Nov 27, 10:30-11:00 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 学生を対象とする国際交流プログラムは、「交流を通じた学び」の観点で一貫性を保ちつつも、時代の流れ、とりわけその時々の教育の状況に応じて柔軟に変化していく必要がある。  1980年以降の日本の教育の変遷を例にとれば、1980年代は主に高等教育機関において教育の国際化が本格化し、外国人留学生の受け入れを強化した。グローバル化社会に突入した2000年代は、国際競争に勝てるグローバル人材育成に注力し、留学者数を増やすための施策が活発化した。しかし、在留外国人数が約288万人となった今日においては、かつて日本を超えて「ソト」に出ていく者に求められたグローバル人材としての資質が、「ウチなる国際化」に対応するため日本に暮らすすべての市民に必要とされるものとなった。  発表者が所属する団体は、主に「異文化理解力、異文化コミュニケーション力」を着目点としてネパール、ベトナムを始めとした東南アジア、南アジアにおいて2008 年以来様々な形態の国際交流プログラムを試みてきた。時代の変化に応じてプログラム内容を変容させてきたが、その活動の根幹には、常に「多様な他者との交流を通じて世界の諸問題に取り組む」という観点があり、団体独自の教育手法に基づいてプログラム構築がなされていた。具体的には以下の六段階プロセスモデルである。 1 .他者に対する考え方の構築 2 .諸問題についての知識の習得 3. 問題解決へのアプローチ法の理解 4. 問題への認識,意見,対応策の考察 5. 他文化社会での他者との交流実践 6. 交流活動の振り返り  我々が取り入れてきたこの教育手法は、異文化コミュニケーションスキルや、地球市民として備えるべき様々なスキルを養成する上で多大な効果を発揮してきた。その一方で、我が国を取り巻く状況はこの10数年で大きく変化しており、教育手法を改善する時期を向かえている。  そこで本発表では、関&大瀬(2019,2020)において考察した国際交流プログラムを再検証し、時代に変化に即した新たな教育手法を開発に向けた取り組みを共有する。

<参考文献> 関昭典,大瀬朝楓(2020)「多文化共生時代における学生主体国際交流プログラムの考 察」,『東京経済大学人文自然科学論集』,146, pp. 69-99. 関昭典,大瀬朝楓(2021)「コロナ禍におけるオンライン国際学生交流 プログラムの考察」『東京経済大学人文自然科学論集』,148, pp. 113-146.

多元的視点の導入による児童の意識体験 —第3学年「ふるさとのまち」探究的学習の事例より— #1841

Sat, Nov 27, 11:10-11:40 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 多文化共生の教育は、これまでに様々な取り組みが報告されているが、佐藤(2007)は、その課題を2点指摘する。「多元的な視点の導入による日本や日本人という枠組みの相対化」「関係性を組みかえる視点」である。さらに佐藤(2019)は、実践上の重要な視点として、「多様な見方や考え方の育成」「人と関わる力の育成」など4点を挙げる。これらから多様な視点を育成する重要性が捉えられる。しかし、小学校での実践はあまり見られない。  そこで本研究では、小学校における「ふるさとのまち」をテーマとした探究的学習において、児童の視点を基点とする探究プロセスに、立場の異なる保護者や外国人留学生の視点を導入したときの児童の意識体験に着目し、多様な他者との交流とその視点に対する児童の見方や考え方の様相を明らかにすることを研究の目的とする。  分析対象事例は、石川県の公立A小学校第3学年(1クラス31名)の総合的な学習の時間である。実践期間は2021年5〜7月。児童は、まず町探検を通して「ふるさとのまち」を調べる活動を行い、次に自分の保護者と地域在住の外国人留学生6名(中国1名、ベトナム1名、インドネシア2名、ポーランド2名)に聞き取り調査を実施した。分析データは、以下3点である。1)児童が授業終末に記述する学習ふりかえり記録、2)外国人留学生への聞き取り調査を録音して作成した発話記録、3)授業のフィールドノーツ。これらのデータは、現象学的アプローチを用いて児童の意識体験を中心に分析し考察する。  研究の結果、児童は、自他の視点を比較して捉えながら、特に共通点や新たな視点に注目していた。「似ている」「インドネシアの人も」「中国の人も」などと国籍を超えて共感したり、外国人留学生の「食べ物への困り感」にはその背景を想像したりするなど、多様な他者に対する児童の見方や考え方の様相が明らかになった。本研究の知見は、小学校における多文化共生教育において、多様な見方や考え方の育成並びに関係性の構築をめざす授業設計への示唆を与えるものと考える。

学生リーダーのリーダーシップスタイルに関する研究-オンラインでの国際協働学習を通して- #1833

Sat, Nov 27, 11:50-12:20 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 本研究は、ある大学の学生グループにおいて、代表を務める学生が、リーダーシップについてどのように考え、グループをリードするのか、そのリーダーシップスタイルについて明らかにするものである。  多様化する生き方へと、私たちを取り巻く環境は急速に変化している。これからの社会を担う学生は、このような状況下でも、他者へ能動的に働きかけ、自己の能力を理解し、その力を発揮できるリーダーシップ能力を身につける必要があるだろう。また、経済産業省が提唱する社会人基礎力の中には、自己の能力の発揮に、自己認識とリフレクションを行うことが追加され、自己を省みることの重要性が示されている。  岡田(2020)は、社会教育団体にてキャンプリーダーを行う学生リーダーのリーダーシップ意識と能力に関する研究を行った。その結果、リーダーシップ能力を発揮している学生は、リーダーとしての社会的アイデンティティが強く、その背景にはシェイムの払拭が影響していることが明らかになった。さらに、自分と他者との違いを理解する能力が高いことも示唆され、どのようにリーダーシップを取るかについて、自己内省を繰り返しながら、自らのコミュニケーション行動を調整していく様子が見られた。  しかし、1つの団体グループでの調査結果だけでは一般化することはできず、様々な学生グループでの調査が必要であった。  今回の研究では、ある大学で結成された国際協働学習グループを対象に調査を行った。グループのリーダーを務める学生1名に半構造化インタビューを行い、学生グループのオンラインミーティングの様子も分析に加えた。この国際協働学習は、新規の企画であり、参加者同士の関係構築もゼロからのスタートであった。最初にグループリーダーを決定後、自主的な活動が始まった。発表では、グループのリーダーになった学生が、①リーダーシップについてどのように考えているのか、②どのようなリーダーシップスタイルをとるのか、について自己内省との関係に着目しながら、調査結果について報告する。

引用文献 岡田麻唯 (2020). グループ活動における学生リーダーのリーダーシップ意識と能力に関する研究 青山学院大学修士論文

異文化コミュニケーション教科書を編む・書く・使う~教科書はどのようにして作られるのか #1886

Sat, Nov 27, 13:20-13:50 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

異文化コミュニケーション研究・教育・研修に従事する方法には様々なものが考えられる。そのひとつに、異文化コミュニケーションに関してこれまで得られた知見を総合的にまとめ、効果的に提示する、異文化コミュニケーション教育(研修)のための「教科書の作成」がある。本報告では、異文化コミュニケーション関係の書籍出版に携わったことがある報告者が、その経験をまとめ、今後、出版を計画している方々への指針を提示したい。 教育全般のみならず、異文化コミュニケーション教育においても教科書の果たす役割は大きいのだが、残念なことに教科書に関する研究はあまり盛んではない。横溝(2011)は、高校教科書の内容を分析し、コミュニケーション研究との接点の同定を行っている。SIETAR紀要『異文化コミュニケーション』の過去の論文タイトルを検索してみると、異文化コミュニケーション関連の教科書に関する研究・実践報告はなく、教科書に関する情報は書評を通してのみとなっている。 自らの研究に専念し、研究論文を発表し、その後、発表した論文を専門書としてまとめて発表するというパターンが見受けられる一方で、教科書を目的とした書籍の場合、複数の著者が共同執筆したものが多く見受けられる。学会が主導し書籍を発表するケースは前者の場合であり、どうしても教科書出版が体系的に行われる機会は限られてしまう。さらに、研究発表と出版とは近い関係にありながら、個々の研究者にとって出版社は遠い存在であり、どのようにアプローチしたらよいのかもわからず課題となっている。 これらの状況を踏まえ、本実践報告では、教科書の出版作業を企画・執筆・編集・出版・営業・使用・改訂などのプロセスに分けて考えていく。編集者・執筆者の立場から、これまでに報告者が経験した教科書出版に関して、各プロセスにおいてどのような作業が発生するのか、何に気をつけなければいけないのか、などについて報告を行い、異文化コミュニケーション研究者のために、教科書作成に取り組みやすい環境作りに寄与することを狙いとする。

参考文献 横溝彰彦(2011)「高校と大学におけるコミュニケーション(学)教育の連続性 ―『高等学校 改訂版 現代社会』第一学習社、2006」Kyushu Communication Studies, Vol.9, 2011, pp. 54-56.

外国ルーツの児童生徒の学校での多文化共生成功例の研究の必要性ー外国ルーツの児童生徒の学校での多文化共生についての文献調査ー #1864

Sat, Nov 27, 14:00-14:30 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 日本に在住する外国ルーツを持つ子どもの数は年々増加している。2020年12月の法務省の統計によると、6歳から17歳の在日外国人の数は17万人以上である。さらに、国際結婚の家庭の子どもの数を加えると、さらに多くなる。外国ルーツの子どもを対象とした学校における多文化共生に関する研究はすでに多く実施されているが、彼らの学校における多文化共生についての問題点・課題や具体的支援・解決策を提起するものが多く見受けられる(Gills-Furutaka, 2009; 竹田, 2012; 劉, 2017)。さらに、多くの研究対象は日本語指導を中心とする教育支援やクラスにおける適応支援などが必要な学校における多文化共生に課題がある外国ルーツの児童生徒であると想定される。このことは、外国にルーツを持つ児童生徒の学校での多文化共生の成功事例に関する研究はまだ多くないことを示唆している。しかし実際の研究動向については明らかではない。  そのため本研究は、現存する外国ルーツの子どもを対象とした日本の学校での多文化共生に関する研究動向の概観を文献調査により明らかにし、多文化共生の成功事例研究の位置づけと意義について論ずることを主な目的とする。具体的には、まず外国ルーツの子どもを対象とした学校での多文化共生をテーマとした先行研究を日本語と英語でキーワード検索し関連文献を収集する。次に収集した文献を内容分析により精査し研究内容を分類しその研究動向を探索する。以上の研究動向を基にして本研究では、日本の学校に通う外国ルーツの生徒の学校での多文化共生成功事例研究の今後の必要性や意義について論じる。最後に一つの意義としては、学校での多文化共生に成功している例は他の外国にルーツを持つ児童生徒の模範例ともなり彼らの学校での多文化共生促進の実践的ヒントとして機能するため重要となることを結論として述べる。   参考文献 Amanda Gills-Furutaka (2009) 「Racially Based Bullying in Japanese Schools」『京都産業大学  教職研究紀要』 第4巻、17-40. 劉 麗鳳(2017)「外国にルーツを持つ子どものいじめ経験と教師の指導方法への示唆」  『教育學雑誌』 第54 巻、103-114. 竹田 治美(2012)「外国人児童・生徒の内部葛藤とアイデンティティの模索」『奈良  産業大学紀要』 第28巻、79-89.

コロナ禍における大学生の異文化コンピテンスの客観的評価に関する考察 #1840

Sat, Nov 27, 14:40-15:10 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 近年、日本の大学では、グローバル化の進展に伴い、国際共修やCOILなど国内キャンパスで展開できる新たな教育国際化の形が模索されてきたが、その教育効果に関する客観的評価の欠如が指摘されている。今後エビデンスに基づく国際化を推進するためには、教育国際化の効果を示すことの重要性が叫ばれている。そこで本研究は、学びの主体である学生の変容に着目し、コロナ禍における大学生の異文化コンピテンスと、それに影響を与える外的要因(教育的介入や海外留学経験)と内的要因(学生の性質や価値観)を客観的に把握することを目的とする。 本研究では、2021年3月~5月に、日本のA大学で異文化理解や留学準備の授業を履修した学部生220名に対して、異文化コンピテンスと個人の性質・価値観を客観的に測定できる2種類の客観的評価テスト(定量調査)であるIDI(Intercultural Development Inventory)とBEVI(Beliefs, Events, and Values Inventory)を実施した。さらに、これらのテストの結果に基づいて、インタビュー調査(定性調査)を実施することで学生の異文化コンピテンスに影響を与える要因を探った。これらの調査の結果、調査協力者を1つのグループとして見ると、IDIでは、自己認識(Percerived Orientation)は異文化感受性発達理論(Bennett, 1986)で言うところの受容、実際の発達度(Developmental Orientation)は二極化のステージにあることが分かった。しかし、この結果を属性等で細分化して分析したところ、学生の所属キャンパスや学内外のソーシャル・キャピタル等によって、IDIでは異文化感受性の発達度、また、BEVIでは世界の理解(Global Access)等の異文化コンピテンスに関わる項目の数値に違いがあることが示唆された。インタビュー調査では、この差異に関する原因などを考察し、A大学の学生の異文化コンピテンスの特性について明らかにした。本発表では、上記結果に関する総合的な分析と考察について報告する。

キャリア選択における21世紀型スキルに関する海外留学のインパクト #1854

Sat, Nov 27, 15:20-15:50 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

本研究は、海外留学が、21世紀型のスキルを身に着けることにいかに貢献し、またそれらが学生のキャリア選択においてどのように影響するかを考察したものである。 留学の効果に関する研究は、学生の英語能力の向上と異文化感受性の発達に寄与している報告も多くなされている(Anderson, et al., 2006; Hernández & Alonso-Marks, 2018; Nishio, Futagami, & Miyazaki, 2018)。留学で得た経験が大学生のキャリアやその後の生活に及ぼす効果について大規模調査を行い測定している研究もある(横田・太田・新見, 2018)。本発表では、Farrugia and Sanger (2017)が行った21世紀型スキルとキャリアに関して留学の効果を検証した論文をもとに、2021年3月卒業の私立大学外国語学部4年生25名に対して実施したアンケートとインタビュー調査の結果を考察する。本学生はアメリカなどへのセメスター留学、または、短期の海外フィールドワークを行った学生である。21世紀型スキルの特徴としては、コミュニケーションスキルや、問題解決力、コンピュータなどのスキルがあげられ、15項目の質問項目に対して、「非常にそう思う」から「まったくそう思わない」の5段階のリカート法で回答させた。質問に対し、「非常に・ややそう思う」という高い評価の項目は次のとおりである。「異文化への適応力」と「新しい経験や学びが増える」は100%の回答であり、「コミュニケーションスキルを伸ばすことができた」は88%、「英語での4技能の伸び」は82%、「問題解決力」に関しては80%である。一方、「コンピュータやソフトを使いこなせる」という項目だけが非常に低く8%であった。留学の経験がキャリア選択や内定先の仕事に生かせるかどうかについての記述やインタビューの回答では、異文化体験や多角的な見方、人間関係の構築など非常にポジティブに影響するとの回答であった。以上のことから、ICTなどのスキルを除き、留学が21世紀型のスキルを伸ばしキャリア選択にも有効に影響していることが明らかにされた。

マスク着用率と集団主義の関係性に関する一考察 #1865

Sat, Nov 27, 16:00-16:30 Asia/Tokyo | LOCATION: Room B (Saturday)

 2021年5月25日の『朝日新聞』夕刊に「集団主義的傾向高いとマスク着用率↗日本は・・・」と題する記事が掲載されたが、この記事の根拠を調べてみたところ、米マサチューセッツ工科大学の研究者らが発表したCollectivism predicts mask use during COVID-19であることがわかった。しかしながら、この論文を精査してみると、いくつかの問題点があり、それらを指摘したい。また、日本人大学生のマスク着用の「行動原理」を分析することにより、マスク着用と個人主義・集団主義の関係性を明らかにする。  これまで言われてきた個人主義・集団主義の概念をより正確に把握し、日本人のマスク着用率の高さに対する文化的解釈を提示することにより、将来の危機に対しても役に立つと考える。個人主義・集団主義に関する最新の研究結果についての文献研究をもとに、日本人大学生に対するアンケート調査を実施し、大学生の一般的傾向を分析し、そこから「行動原理」としてのマスク着用についての解釈を提示する。